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共感型採用は、仕組みで再現できる ―「いい人が続く」を運任せにしないために

共感型採用は、「価値観の合う人にたまたま出会えたら運がいい」という属人的なものではありません。自社の価値観を言葉にし、候補者と出会うすべての接点に埋め込み、相互に確かめ合う。そうやって仕組みにできます。

大切なのは、共感を「感覚」で終わらせないことです。感覚のままでは、担当者が変わった瞬間に再現できなくなります。本記事では、共感型採用を再現性のある設計に落とし込む手順を、中小企業の現場目線で整理します。

なぜいま「共感型採用」なのか ― データが示す、中小企業ほど問われる「続くかどうか」

採用のゴールは「入社」ではなく「活躍と定着」です。ここで、見過ごせないデータがあります。

厚生労働省が2025年10月に公表した調査によると、令和4年(2022年)3月に大学を卒業した新規就職者の、就職後3年以内の離職率は33.8%でした。およそ3人に1人が、3年以内に辞めている計算です。

さらに事業所の規模別に見ると、この数字は大きく変わります。従業員1,000人以上の企業では27.0%なのに対し、5〜29人の企業では52.0%、5人未満では57.5%。規模が小さいほど、早期離職率は高くなる傾向がはっきり出ています。中小企業やスタートアップにとって、「採った人が続くかどうか」は、大手以上に切実な経営課題だということです。

では、若手はなぜ辞めるのでしょうか。リクルートマネジメントソリューションズが2025年に紹介した調査では、不満を理由に辞めた若手・中堅の離職者があげた理由の上位は、「人間関係・職場の雰囲気が合わなかったから」が41%、「担当している業務に意義を感じられなかったから」が40%、「労働時間が長かったから」が36%でした。給与や労働時間といった条件面と並んで、「雰囲気が合わない」「意義を感じられない」という価値観のミスマッチが、大きな比重を占めています。

条件だけを整えても、この層の離職は防ぎきれません。だからこそ、入口の段階で「何を大切にしている会社なのか」を伝え、候補者の価値観とすり合わせておく。それが共感型採用の狙いです。

ただし、ここで一つ立ち止まっておきたい点があります。「価値観が合う人を採る」は、ともすれば「自分たちと似た人だけを採る」に滑りやすい、ということです。共感を同質化とはき違えると、組織から多様性が失われ、変化に弱くなります。共感型採用が見極めるのは「性格や属性が似ているか」ではなく、「大切にしている価値観の方向が重なるか」。この区別は、後の選考設計でも繰り返し効いてきます。

「共感」を仕組みに変える3つの分解 ― 言語化・可視化・すり合わせ

「共感が大事なのは分かる。でも、どうやって仕組みにするのか」。ここが本題です。共感型採用は、次の3つに分解すると設計できます。

1. 自社の価値観を言語化する

すべての起点は、自社が何を大切にしているかを言葉にすることです。ここでつまずく会社は少なくありません。「風通しがいい」「アットホーム」「成長できる」――こうした言葉は、どの会社でも使えてしまうぶん、候補者には何も伝わりません。避けたいのは抽象語です。代わりに、行動のレベルまで下ろします。たとえば「主体性を大事にする」で止めず、「役割が決まっていない仕事でも、まず自分で仮説を立てて動く人が評価される」と、日常の場面が浮かぶ言葉にする。価値観は、行動で語ったときに初めて伝わります。

2. 候補者接点に一貫して埋め込む

言語化した価値観は、求人票、スカウト文、カジュアル面談、採用広報の記事――候補者が触れるすべての接点で、同じトーンで繰り返されて初めて伝わります。求人票では魅力的なことを書いているのに、面談では誰も価値観に触れない。これでは候補者は「本当だろうか」と感じます。接点ごとに言うことがずれないよう、価値観を一本の軸として通すことが重要です。生成AIでスカウト文や求人票を量産できるようになった今、この「一貫性」はむしろ差がつきやすくなっています。誰でも整った文章を出せるからこそ、自社ならではの価値観が通っているかどうかが、埋もれない鍵になります。

3. 相互に「すり合わせる」プロセスにする

共感型採用は、企業が候補者を一方的に見極める場ではありません。候補者もまた、自分の価値観がこの会社と重なるかを確かめています。だから選考は、伝えて、相手の反応を聞き、こちらも問い直す、相互のすり合わせの場として設計します。「選ぶ/選ばれる」ではなく「一緒に確かめる」。この姿勢が、入社後のミスマッチを減らします。

共感は「伝える」だけでは仕組みにならない。
「確かめる」まで含めて、はじめて再現できる設計になる。

選考プロセスへの実装 ― 各ステップに「価値観の問い」を置く

3つの分解を、実際の選考フローに落とし込みます。ポイントは、各ステップに「この段階で何の価値観を確かめるのか」をあらかじめ決めておくことです。担当者の感覚任せにしないための、いちばん現実的な工夫です。

カジュアル面談:伝える段階

最初の接点では、見極めるよりも伝えることを優先します。自社が大切にしている価値観と、その背景にある考え方を、具体的な場面とともに率直に話す。ここで正直に伝えるほど、価値観の合わない候補者は自然に離れ、合う候補者は前のめりになります。入口での相互の絞り込みが、後段の精度を上げます。

一次選考:スキルと価値観を分けて見る

スキル・経験の確認と、価値観の確認は、評価軸を分けておきます。混ぜると、「なんとなく良さそう」という総合印象に流されがちだからです。価値観については、過去の具体的な行動を聞く質問が有効です。「これまでで、自分の判断で動いた経験を教えてください」といった問いは、抽象的な自己申告ではなく、実際の行動から価値観の方向を読み取れます。

最終面談:すり合わせる段階

最後は、経営者や現場のリーダーが、価値観をすり合わせる場にします。ここで意識したいのは、「共感してくれるか」を試すのではなく、「この会社で大切にしていることに、率直にどう感じるか」を聞くことです。相手が違和感を口にできる場のほうが、入社後の齟齬は減ります。全員が気持ちよく頷く面談より、率直に問い返してくれる面談のほうが、実は健全です。

ここでも、先ほどの注意点が効いてきます。価値観のすり合わせを「自社に似ているか」の確認にしないこと。異なる経験や視点を持ちながら、大切にする方向が重なる人こそ、組織に新しい力をもたらします。共感の確認は、多様性を狭めるためではなく、土台を共有するために行います。

仕組みが機能しているかを測る ― 入口で終わらせない

共感型採用は、内定を出した時点では完成しません。本当に価値観が重なっていたかは、入社後の定着と立ち上がりに表れます。だから、仕組みが機能しているかを、入社後の事実で振り返ることが欠かせません。

入社した人が早期に離職していないか。現場になじみ、力を発揮できているか。もし早期離職が続くなら、選考で見ていた価値観が実態とずれていたか、あるいは伝えていた価値観と入社後の現実に乖離があった可能性があります。採用の入口と、受け入れる側の環境は、つながって初めて機能します。

そして、言語化した価値観そのものも、一度決めたら終わりではありません。事業のフェーズが変われば、大切にすることも少しずつ変わります。採用で使う言葉を定期的に見直し、現実と合っているかを確かめ続ける。この更新を回してこそ、共感型採用は「仕組み」であり続けます。

まず、最初の一歩

いきなり選考フロー全体を作り替える必要はありません。まずは、自社が大切にしている価値観を一つだけ選び、それを「行動のレベル」の言葉に書き直してみてください。「主体性」ではなく、「どんな場面で、どう動く人か」。一文で構いません。

その一文が、求人票にも、面談の問いにも、記事にも通せる軸になります。共感型採用の仕組みづくりは、抽象的なスローガンからではなく、この一つの具体的な言葉から始まります。

Action Points
共感型採用を仕組みにする、5つの手順
  1. 自社の価値観を一つ選び、「行動のレベル」の言葉に書き直す(抽象語を避ける)
  2. その言葉を、求人票・スカウト・面談・記事の全接点で同じトーンに揃える
  3. 選考の各ステップに「この段で確かめる価値観」を割り当てる
  4. 面談は「見極め」ではなく「相互のすり合わせ」に設計する
  5. 入社後の定着・立ち上がりで仕組みが機能したかを振り返り、価値観の言葉を更新する
Get Started
自社の価値観を、言葉にするところから

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出典・参考

※本記事は、siroの採用広報・採用ブランディング支援の知見と、各種調査をもとにした一般的な整理です(統計は記載時点の値)。御社に合った進め方は状況によって変わるため、具体的なご相談は無料の採用魅力診断・お問い合わせから承ります。

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