リファラル採用はなぜ機能しないのか?〜売り手市場時代に求められる“採用構造”の再設計〜

前回の記事では、「リファラルは制度ではなく“状態”から生まれる」というお話をしました。
今回はその続編です。
なぜ今、改めてリファラル採用が注目されているのか。
そして、なぜ多くの企業で“機能しない”のか。
その背景には、採用市場そのものの構造変化があります。
売り手市場は「一時的」ではなく「構造」
ここ1年ほどで、リファラル採用を再検討する企業が増えている印象があります。
背景にあるのは、景気の波ではありません。
日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少を続けています。
働き手の母数そのものが、長期的に減っている。
加えて、有効求人倍率は高水準で推移し、売り手市場は常態化。
採用市場は「厳しい時期」なのではなく、“競争が前提の構造”に入ったということです。
この前提に立つと、問いは変わります。
- 媒体を増やすか?
- 広告費を上げるか?
- エージェントを追加するか?
ではなく、
この構造下で、どうやって人材を“持続的に”獲得するのか?
その文脈で、リファラルが再び注目されています。
なぜリファラルは合理的に見えるのか
売り手市場が構造化した今、
- 採用単価は上昇
- 母集団形成は難化
- ミスマッチのコストは拡大
その中でリファラルは、
- 比較的コストを抑えられる
- カルチャーフィットの期待値が高い
- 定着率が安定しやすい
という合理性を持っています。
しかし一方で、こんな声も多く聞きます。
「制度はつくったが、機能していない」
ここで多くの企業が見誤りますが、問題は制度ではありません。
リファラルは「信頼の転用」である
社員が友人を紹介するという行為は、「この会社を、自分の人間関係の中に入れてもいい」という意思表示です。
リファラルとは、信頼の転用。そして信頼は、制度からは生まれません。
信頼は、
- 理念と現実が一致しているか
- 経営の言葉と日常の判断が一致しているか
- 働くことに誇りを持てているか
という“組織の状態”から生まれます。
ここが整っていなければ、制度は空回りします。
リファラルが回る「三層構造」

【第1層】理念浸透(内側)
多くの企業はMVVや行動指針を持っています。
しかし課題は、それが“日常の判断基準として使われているか”どうか。
理念は、作るよりも浸透させるほうが難しい。
行動指針を意思決定の場面に接続し、管理職・現場との対話を設計し、採用基準と再接続する。
紹介は、この“浸透度”に比例します。
【第2層】共感発信(内外接点)
理念が腹落ちしたら、次は流通です。
- 経営者の想い
- 社員の価値観
- 仕事観
これらを言語化し、外部へ届ける。
ここで重要なのは“装置”。
オウンドメディアを構築する方法もありますし、ストーリー発信に適したプラットフォームを活用する方法もあります。
たとえば Wantedly は、
- 想いの言語化が前提設計
- 社員ストーリーを蓄積できる
- カジュアル面談文化がある
という特徴を持ちます。
媒体はあくまで手段。
重要なのは、共感が循環する構造かどうかです。
【第3層】紹介循環設計
理念が浸透し、共感が外に流通し、その後に制度設計が活きます。
順番は必ず、理念 → 発信 → 仕組み
私たちが提唱する「共感循環モデル」はこうです。

この循環が回ると、紹介は“施策”ではなく“文化”になります。
経営視点で考える「採用のROI」と本当の損失
30名規模の企業が、年間3名を採用するケースを想定してみます。
仮にエージェント経由の場合、総額は約400万円超。
そのうち1名が半年で離職したとしたらどうでしょうか。
- 採用費
- 給与
- 教育コスト
- マネジメント工数
これらを合計すると、300万円以上の損失が発生する可能性があります。
しかし、これは“見えるコスト”に過ぎません。本当に大きいのは、ここからです。
ミスマッチは「数字」ではなく「組織」に波及する
5〜50名規模の組織では、1名の影響力は決して小さくありません。
- チームの空気が変わる
- 既存メンバーのモチベーションが揺らぐ
- 管理職の時間が奪われる
- 経営者や幹部の判断エネルギーが消耗する
- 採用ブランドにじわじわと影響する
少人数組織ほど、一人あたりの密度が高い。
だからこそ、ミスマッチの波及は想像以上に大きいのです。
採用失敗とは、単なる「費用の無駄」ではありません。
それは、組織の推進力を一時的に鈍らせる経営インパクトです。
だからこそ私たちは、採用を“単発のコスト”ではなく、“構造投資”として捉えるべきだと考えています。
構造投資という選択
仮に、
- 理念浸透設計
- 発信基盤整備
- 紹介循環構築
に年間200〜300万円を投資したとします。
それによって、
- 採用単価が安定し
- 定着率が改善し
- 紹介が自然に生まれる
のであれば、それは単年度費用ではありません。
組織の再現性という資産が残ります。これは採用施策ではなく、経営投資です。
採用はコストか、資本形成か。制度か、構造か。
広告は、止めればゼロになります。出稿をやめれば、応募も止まる。
しかし、
- 誇りを持って働く社員
- 理念を語れる組織
- 紹介が循環する文化
これらは、止まりません。
売り手市場が前提となった今、採用は“単発のコスト”ではなく、将来キャッシュフローを左右する資本形成です。
だからこそ、問うべきはここです。
制度を整えるのか。
それとも、構造を整えるのか。
リファラル制度を導入すること自体は、決して悪くありません。
しかし、順番があります。
構造が先。制度は後。
理念が浸透し、共感が流通し、紹介が生まれる土壌がある。
その上に制度を乗せたとき、初めて仕組みは機能します。
この順番を守るだけで、成功確率は大きく変わります。
採用を“施策”で終わらせるのか。
それとも“資本形成”として再設計するのか。
その選択が、これからの採用力を決めます。
まとめ
人口構造は変えられません。
しかし、組織構造は変えられます。
毎年、採用単価の上昇に追われ続けるのか。
それとも、紹介が循環する構造に投資するのか。
その選択が、数年後の採用力を左右します。
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siro編集部
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